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横浜コミューン

移動と定住のあいだで、日本/語を問い直す

横浜トリエンナーレ2014参加作品。『赤い靴クロニクル』(2010年)や『東京ヘテロトピア』(2013年)における「内なるアジア」への取り組みをさらに展開させ、横浜のアジア・コミュニティのリサーチから「日本/語」を問い直す。

横浜美術館に展示されたのは、さまざまな理由で故郷を追われ、家族とともに、あるいは家族と離れ離れになって日本に辿り着いた人たちの声。いわゆるインドシナ難民の日本語である。言葉と共同体は、移動と定住のあいだでつねに揺れ動く。美しく、正しく、自然に根を張ろうとするが、同時にみずから「よそもの」となることをやめず、どこまでも「旅」を続ける。

言葉が漂流の途上で「今、ここ」にあるように、この作品は美術館にとどまりつづけることなく、10月末には黄金町に移動し、ライブ・インスタレーションへと姿を変える。

『横浜コミューン』横浜トリエンナーレ2014

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完全避難マニュアル フランクフルト版

「あなたにとって避難とはなんですか?」

2010年にフェスティバル/トーキョーで発表された『完全避難マニュアル 東京版』が、ムーザントゥルム劇場の製作によって大規模に発展。約1か月間にわたって「上演」され、フランクフルト市周辺のライン・マイン地域に広がる複数の都市を演劇的レイヤーによって結びつけた。

観客はプロジェクトのウェブサイトを訪問し、問いに答え、地図をダウンロードして40カ所の「避難所」を訪問する。それぞれの「避難所」は4つのツアーにカテゴライズされ、Port Bのみならず、他の15組のアーティストによる提案も散りばめられている。どの避難所に、どのような順番でたどり着くかは、観客次第だ。観客は「避難者」の身振りをまとい、自らの身体を移動させながら、この「経路の演劇」のパフォーマーとなる。『完全避難マニュアル』は、参加者一人ひとりが「あなたにとって避難とはなんですか?」という問いを通過することで、見知らぬ他者と、そして自分自身と都市の中で出会う、演劇的アーキテクチャ/プラットフォームなのだ。

EVAKUIEREN 完全避難マニュアル

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東京ヘテロトピア

「もう一つの東京」に出会う、旅の演劇

ガイドブックとラジオを手に、参加者は「東京の中のアジア」13カ所を自由に旅する。地図に記された場所に辿り着き、ラジオを指定の周波数に合わせると、4人の詩人・小説家(管啓次郎、小野正嗣、温又柔、木村友祐)が書き下ろした物語が聞こえてくる。物語は「Port観光リサーチセンター」のリサーチ(監修:林立騎)から生まれたものだ。物語の朗読は、多くの場合、日本語を母語としない語り手によってなされている。宗教施設、モニュメント、難民収容施設跡地、エスニックレストラン…。見慣れたはずの「トーキョー」を異国のように「旅」する中で、作品は無数の偶然を招き入れ、参加者は自分だけの出会いを重ねる。

『東京ヘテロトピア』は2020年の東京オリンピックまで拡大を続ける。さらに広島、長崎、沖縄、台南、台北、フランクフルトなど、国内外の各都市でも「ヘテロトピア」シリーズの展開が予定されている。

『東京ヘテロトピア』フェスティバル/トーキョー13

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光のないⅡ

福島 − 東京。その距離を問い直すツアー・パフォーマンス

ノーベル賞作家エルフリーデ・イェリネクが福島の原発事故を扱った『光のないII』を、東京・新橋駅周辺でツアー・パフォーマンスとして上演。観客は12枚のポストカードとラジオを手に新橋駅前のニュー新橋ビルを出発する。ポストカードの表面には福島の避難区域で撮影された報道写真がプリントされ、裏面には次に訪問すべき場所までの地図とナビゲーションが書かれている。ナビゲーションに従って訪問地(空きオフィス、東電本社前の広場、空き地、空き部屋、廃墟、ビルの屋上・・)を訪ねると、報道写真のイメージが三次元で再現されている。場所ごとに指定された周波数にラジオをチューニングすると『光のないⅡ』の朗読が聞こえてくる。いわき総合高校演劇部の女子生徒たちが淡々と朗読する、いかにも新橋に不似合いな声を聞きながら、参加者は「ツーリスト/フォトジャーナリスト」となってポストカードの福島と東京に仮設された福島を見比べることになる。奇妙にずれた12箇所の「福島/東京」を繰り返し訪ねることで、福島と東京の距離をかき乱し、その距離を捉え直すツアーであった。

出発地点のニュー新橋ビルは福島第一原子力発電所と同じ1971年に開業した。東京電力本社をはじめ、日本の原子力政策史に重要な役割を果たしてきた新橋駅周辺で上演された『光のないII』は、2013年には「ウィーン芸術週間」でウィーン版が制作・上演された。ウィーン版では、建設後に国民投票で稼働が阻止された「世界一安全な原発」ツヴェンテンドルフ原発の見学ツアーも開催された。

『光のないⅡ』フェスティバル/トーキョー12

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Referendum – 国民投票プロジェクト

「わたしたちの声」を集める移動型演劇プロジェクト

東日本大震災と福島の原発事故を経て、「わたしたちの声」とはなにか、どうすればそれを聞くことができるのかという問いに、演劇的な応答が示された作品。「Referendum – 国民投票プロジェクト」と書かれた改造保冷車の荷台に映像インスタレーションの鑑賞ブースが設けられ、東京と福島の中学生へのインタビューが一人一枚のDVDになって並んでいる。質問はたとえば、今一番欲しいものは何ですか、総理大臣になったら何をしますか、これから東京/福島はどうなると思いますか、今一番わからない事は何ですか、あなたの夢は何ですか…。観客は自由に鑑賞し、最後に自分自身もブースで同じ質問に答え、投票する。投票用紙はプロジェクトのウェブサイトで公開され、中学生のインタビューと観客の投票が「わたしたちの声」としてアーカイブされていく。

改造保冷車は東京都内、横浜市、福島県を巡回し、声は移動しつづけた。詩人の山田亮太と歌人の斉藤斎藤がそれに付き添い、うたの声が重ねられた。

一カ月の会期中には、トークイベントが繰り返され、鴻英良、谷川俊太郎、磯崎新、川俣正、ハンス=ティース・レーマン、赤坂憲雄、吉増剛造、原武史、吉見俊哉、黒瀬陽平、桂英史、濱野智史、和合亮一、今野勉の各氏が招かれ、政治、歴史、声、意志決定について対話を繰り返した。(これらの対話は『はじまりの対話』(思潮社)にまとめられている。)

政治への直接的な参加資格をもたない中学生の声を集め、賛成/反対に収まらない問いを投げ、うたをつくり、意志決定に至らない対話を繰り返す。それを「国民投票」と名付けることで、政治が聞き取らない「わたしたちの声」を演劇プロジェクトという枠組みで集めた。

『国民投票プロジェクト』は、続く2012年夏に東北を巡り、14年春には広島・長崎・埼玉を訪れた。中学生のインタビュー映像と観客の投票用紙のアーカイブは膨らみ、その蓄積は2011年以後の「声」を記録し続けている。インタビュー映像は水戸(水戸芸術館)、ウィーン(ウィーン芸術アカデミー)、ベルリン(ヘッベル・アム・ウーファー劇場)などで展示された。(プロジェクトは現在も継続中。)

『Referendum – 国民投票プロジェクト』特設サイト
『Referendum – 国民投票プロジェクト』フェスティバル/トーキョー11

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完全避難マニュアル 東京版

観客×都市。新たな出会いを生む演劇的アーキテクチャ

山手線29駅すべての周辺につくられた「避難所」で、東京という都市と参加者のあいだにさまざまな「出会い」が生まれる。プロジェクトのウェブサイトを訪れ、質問に答えると、山手線のいずれかの駅に近い訪問地が指定され、地図をダウンロードして訪問できる。そこは宗教施設、コレクティブハウス、シェアハウス、路上生活者の集まり、出会いカフェなど、さまざまなコミュニティだ。「東京の時計」としての山手線の周辺につくられた、「東京の時間」からの避難所の数々。一時的に「避難民」となった参加者は、都市との関係を新たに築き直す。「避難」という宙吊りになった空間と時間の中で生まれる避難所/避難民のネットワークが、新たな「トーキョー」の可能性を示した。

2014年秋には『完全避難マニュアル フランクフルト版』がドイツで制作される。

『完全避難マニュアル 東京版』特設サイト
『完全避難マニュアル 東京版』フェスティバル/トーキョー10

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赤い靴クロニクル

「開かれた港」の歴史を辿る三人一組の旅

黄金町を舞台に横浜開港150年の歴史と現在を問い直すツアー・パフォーマンス。参加者は三人一組となり架空の「根岸ツアー」を体験する。根岸外国人墓地、米軍施設、根岸競馬場。戸数100戸足らずの半農半漁の寒村・横浜は、外国を受け入れることによりわずか150年で日本第二の巨大都市になった。『赤い靴クロニクル』でその歴史が辿られる場所は、黄金町のかつての「ちょんの間」。黄金町にいたセックスワーカーの存在と横浜の歴史が重なり合う。アジア系移民による「黄金町語学学院」を体験し、黄金町の歴史と風景を通り抜け、ランドマークタワーを見上げながら、参加者は横浜の発展の光と影を見つめる。

2008年の『ディクテ・フォーラム』からはじまった横浜への取り組みは、2010年の『赤い靴クロニクル』を経て、2014年の『横浜コミューン』(横浜トリエンナーレ)につながった。

『赤い靴クロニクル』

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個室都市 東京

「個室」にひらかれる都市の声、観客がつくるそれぞれの上演

東京・池袋西口公園に24時間営業の個室ビデオ店が出現する。訪問者は料金を支払い、自由にDVDを鑑賞する。中身は公園内で撮影されたインタビューだ。朝から深夜まで人の流れが絶えない池袋西口公園で、老若男女、国籍もさまざまな人たちに同じ質問がぶつけられる。たとえば、今一番欲しいものは何ですか、東京は住みよい街ですか、日本は豊かな国だと思いますか、あなたの夢を教えてください、あなたは一体誰ですか…。日常では聞こえてこない「声」がヘッドホンから入り込む。DVD鑑賞後に用意されているオプションツアーは「避難訓練」。渡された地図を手に池袋の地下を抜けると、雑居ビルの一室に「出会いカフェ」がつくられている。訪問者はマジックミラー越しに相手を選び、10分間の会話をしたのち、池袋西口公園を見はるかす小部屋で作品のエピローグを迎える。

2010年にはKYOTO EXPERIMENTで『個室都市 京都』が、11年には「ウィーン芸術週間」で『個室都市 ウィーン』が制作された。

『個室都市 東京』フェスティバル/トーキョー09秋