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続・前橋聖務日課 ーあかつきの村ウォーク

前橋市西大室町に位置するあかつきの村は、 カトリック司祭である石川神父の呼びかけにより1979年にエマウス運動として始まり、社会の中で困難を抱える人の社会復帰を助ける開かれた共同体として誕生しました。1982年よりベトナム難民定住センターとしての役割を20年近く果たし、中でも難民船で日本へ到着後、日本社会に馴染めずに精神疾患を患った難民たちをも受け入れた日本でも特異な施設として知られます。

今回の『続・前橋聖務日課ーあかつきの村ウォーク』は、2016年にアーツ前橋で開催された「表現の森 協働としてのアート」展の参加作品『前橋聖務日課』(2016) をベースに発展させたものであり、あかつきの村を実際に訪れる体験型作品となります。ガイドブックを片手に、あかつきの村の敷地内に設置されたQRコードを読み取りながら、あかつきの村を散策することができます。

あかつきの村ウォーク 開催概要

会期中、毎日開催しています。特に窓口などはありませんので、ご自由に村内にお入りください。

開催期間|2019年10月12日(土)- 2020年1月13日(月)
開催時間|9:00-17:00
場所|社会福祉法人 フランシスコの町 あかつきの村
(群馬県前橋市西大室町448-3)
所要時間目安|約1時間半
料金|無料
※あかつきの村の入り口に募金箱が設置されておりますので、「あかつきの村」へのご協力をお願いします。

http://www.artsmaebashi.jp/?p=14187

ガイドブック配布場所

・あかつきの村入り口

アーツ前橋

コ本や honkbooks

MISA SHIN GALLERY

「あかつきの村」を訪ねる

text by 高山明

前橋市西大室町、赤城山のふもとに「あかつきの村」はある。ここは1979年にキリスト教の「エマウス運動」を実践する小さなコミューンとしてはじまり、82年からは敷地内に「ベトナム難民定住センター」を開設、90年まで20年近くにわたって、延べ300名ほどの「インドシナ難民」を受け入れた。来日後に精神疾患を発症した難民たちも日本各地から迎え、定住センターが役割を終えた今も、数名の元インドシナ難民と日本人の病者とともに生活が続けられている。

この村をはじめたのは石川能也神父(1937 – 2012)。今のあかつきの村の土地1万平米を無料で借り受け、78年の年末から開墾をはじめ、廃品回収を行う生活共同体「エマウス運動」のコミューンを少しずつ切り開いた。もともとこの土地はある医師が教会に寄贈したもので、周囲より高く、南には見晴らしが広がり、北には赤城山が聳えるが、鬱蒼とした松林で、人気なく、地元の人たちも「あそこを通るのは怖くていやだ」と嫌っていたという。1979年に開村し、81年に丸太づくりの聖堂が完成された。

2016年の『表現の森』展では、あかつきの村を美術館の中に「移す」ことを試みた。といってももちろん移設は不可能なので、映像を用いてあかつきの村を「切り撮り」、それを美術館に持ってきて「映す」。『前橋聖務日課』というタイトルのもと、ぼくらが切り取らせてもらったのは元ベトナム難民のサンさんと、村に住んで彼をずっと支えてきた佐藤明子さんだった。この二人の関係が現在のあかつきの村の核になっていると感じたし、実際に、宗教や共同体や「難民」というものについて考えるための素晴らしく豊かな素材を提供してくれた。そして何より美しかった。

昨年の12月、そのサンさんが亡くなった。『表現の生態系』展に向けて、どうやって『前橋聖務日課』を発展させればいいか迷っていたのだが、発展させる必要などなく、むしろあの時「切り撮った」ものを、サンさんの仕草や笑顔、佐藤さんの言葉や歌を、あかつきの村に返せばいいのだと葬儀の場で悟った。そして、場所を切り取ってくるのでなく、私たちの体をそこへ持っていくこと。あかつきの村は門も塀もない一本の「通り道」で、その土地性が共同体のあり方や宗教性と深く結びついており、あの道を吹き抜ける風は、あかつきの村でしか感じられないのだから。

あかつきの村ウォーク
インストラクション

◆参加にあたり、QRコードを読み取ることができるスマートフォンと、イヤフォンをお持ちください。用意が難しい方は、アーツ前橋の受付で借りることができます。

◆あかつきの村の入り口付近にあるマリア像の後ろに、小さなボックスがあります。その中にガイドブックと、蚊除けスプレー・使い捨てカイロなどが入っていますので、ご自由にお取りください。

◆ガイドブックのウォーキングMAPを見ながら、あかつきの村内にあるQRコードを見つけ、スマートフォンで読み取ってください。

◆<あかつきの村ウォーク>は、勾配のある細い道を含む1時間半ほどのコースになり、ご自身で歩いて参加できる方を想定しています。歩行に困難がある方は、アーツ前橋までご連絡ください。

<本プロジェクトに関するお問い合わせ>
アーツ前橋
TEL:027-230-1144
MAIL:artsmaebashi@city.maebashi.gunma.jp

アーツ前橋 展覧会
表現の生態系 世界との関係をつくりかえる

【会期】2019年10月12日(土)―2020年1月13日(月・祝)
開館時間】10時~18時(入場は17時30分まで)
【休館日】水曜日、年末年始(12月28日~1月4日)
【会場】アーツ前橋(群馬県前橋市千代田町5-1-16)
【料金】一般600円/学生・65歳以上・団体(10名以上)400円/高校生以下無料
※10月28日(土)は群馬県民の日、12月10日(火)は世界人権デー、2020年1月9日(木)は前橋初市まつりのため無料

リガ・ヘテロトピア

参加者は、ガイドブックとラジオを手に、リガ市内の6カ所の訪問地を、徒歩あるいは自転車で旅をする。地図に記された場所に辿り着き、ラジオを指定の周波数に合わせると、ラトビアと日本の6人の作家が書き下ろした物語が聞こえてくる。『リガ・ヘテロトピア』は、かつて「諜報の神様」と呼ばれた軍人スパイの小野寺信と、その妻でムーミンの翻訳者である小野寺百合子、1930年代の小野寺夫妻のリガでの痕跡を辿るツアーとなった。

開催概要

開催期間:2019年9月5日(木)-13日(金)
上演言語:ラトビア語・英語
ツアー所要時間:約2時間30分

参加作家:
井鯉こま、小林エリカ、管啓次郎
Pauls Bankovskis, Andris Kuprišs,Inese Zandere

主催:New Theatre Institute of Latvia
Homo Novus Festival 2019
http://homonovus.lv/eng/programme?s=Heterotopia

Photo: Juris Rozenbergs

<ヘテロトピア・シリーズ>

2013年の東京での上演以来、高山明/Port Bが各都市で展開しているプロジェクト。都市に集積したヘテロトピアを体験するツアー型のシリーズ作品ではありながら、街に埋もれ散在しているヘテロトピアから、それぞれの街に応答したコンセプトの元に作品化している。
・2013『東京ヘテロトピア』Festival / Tokyo 2013(東京/日本)
・2015『北投ヘテロトピア』台北国際映像展、鳳甲美術館(台北/台湾)
・2017『ピレウス・ヘテロトピア』Fast Forward Festival (アテネ/ギリシャ)
・2017『ベイルート・ヘテロトピア』Sharjah Biennial 13(ベイルート/レバノン)
・2019『アブダビ・ヘテロトピア』Durub Al Tawaya (アブダビ/UAE)
・2019『リガ・ヘテロトピア』Homo Novus Festival(リガ/ラトビア)

 

パブリックスピーチ・プロジェクト

現代の「パブリックスピーチ」を問う、Port B最新作。

『パブリックスピーチ・プロジェクト』とは?

実際の都市でパブリックな場をつくるには、どのような言葉をどのように発すればいいのかー。本プロジェクトはそんな問いを出発点に、パブリックスピーチを捉えなおす試みです。
会期終盤には、アジアの複数の都市のラッパーたちが、戦前のアジア主義のテキストをベースにしたオリジナルトラックを持ち寄り、アジア4都市間からの「演説/ラップ」を同時中継するライブパーティを名古屋にて開催します。ヒップホップによって「アジア」が接続され、アジア主義が更新されるとき、彼らの声は現代の公共性を獲得しうるでしょうか?
かつてないヒップホップ x アジア主義の上演にご期待ください。

本プロジェクトは以下のように変更となりました。

実際の都市でパブリックな場をつくるには、どのような言葉をどのように発すればいいのかー。本プロジェクトはそんな問いを抱えながら、パブリックスピーチを演劇論/演技論として捉えなおし、戦前のアジア主義者たちのテキストを演じる方法をヒップホップを通じて探る試みである。

『パブリックスピーチ・プロジェクト』は、あいちトリエンナーレ初日に行われた「迂回路を開発する」という高山明によるレクチャーパフォーマンスで幕を開けた。その後会期中に起きた一連の騒動を受け、「Jアート・コールセンター」を設立。会期ラストは、様々な「声」がライブパーティに合流し、響き合う、「パブリックスピーチ」の場が出現する。

 

『ワーグナー・プロジェクト』(2017)   Photo: Naoya Hatakeyama

開催概要

▶︎レクチャーパフォーマンス
2019年 8月1日(木)19:00     
2019年 8月2日(金)17:00
会場:愛知県芸術劇場 大リハーサル室
チケット料金:1500円
ラッパーたちによるアジア主義のテキスト朗読から始まり、会期ラストに開催されるライブパーティに至るまで、プロジェクトの全貌を高山明が紹介。
https://aichitriennale.jp/artwork/A60a.html

▶︎展示
2019年 8月1日(木)- 10月14日(月・祝)
会場:愛知芸術文化センター8F
アジア主義の3つのテキストの朗読が、英語/日本語字幕とセットになった展示映像。ライブパーティに出演するラッパーたちが朗読を担っている。
https://aichitriennale.jp/artwork/A60b.html

▶︎ライブパーティ
2019年 10月13日(日)19:00開場 / 19:30開演
会場:Live & Lounge Vio(CLUB MAGO)
(住所:名古屋市中区新栄2丁目1−9 flexビル b2)
※ニコニコ生放送・生中継はこちらから(無料配信)

19:30 オープン・スピーチ / 高山明
『迂回路をつくる、その後  ー Jアート・コールセンター設立報告』

20:00 LIVE
出演:Moment Joon、Itaq、玉名ラーメン
司会:ダースレイダー

21:00 パブリック・スピーチ(オープン・マイク)

DJ:荏開津広

★無料(ワンドリンクオーダー制)
★ご予約:https://publicspeechproject.peatix.com/
(定員に達したため締め切りました)

・Peatixでご予約済みのお客様は会場の混雑状況に関わらずご来場順にご入場頂けます。

・ご予約のないお客様は、会場の空き状況に応じて先着順でご案内いたします。混雑時はご入場頂けない場合もあることをあらかじめご了承ください。
https://aichitriennale.jp/artwork/A60c.html

出演者プロフィール

Itaq
1999年生まれ。栃木県那須の宗教学校で思春期を過ごし、その後上京。エッジの効いたリリックとコンセプチュアルな作風、そして緻密なフローを武器とする。インターネット上には、ミックステープやEPをはじめとした無数の音源がアップされている。2019年5月には粗悪ビーツと結託して制作された1st Album『委託』をリリース。現在は自身のレーベル『Fundamental』を立ち上げ、レーベルメイトによる物も含めた幾つかのリリースを準備している。

玉名ラーメン
独自の感覚とセンスで、まだ見ぬ風景を奏でる現役女子高生アーティスト兼プロデューサー。演出家の高山明が手がけた演劇『ワーグナー・プロジェクト』(2017)や、豊田道倫のアルバム『サイケデリック・ラブリー・ラスト・ナイト』(2019)への参加などで話題となったセカンドEP『organ』(2019)は、トラップからアンビエント、ハウスまでをも内包したアブストラクトなトラックとポエティックなつぶやきが融合。様々なジャンルやシーンを越え、ボーダレスに自然と混ざり合った、今の感性を全面に感じる楽曲を制作している。

Moment Joon
GROW UP UNDERGROUND RECORDS所属。韓国ソウル生まれ。移民者ラッパーとして音楽活動を行う。2019年には『Immigration EP』を発表し、Zeebra主催の『フリースタイルダンジョン』でのLIVE出演や、KEN THE 390やOmen44 x Vikn x Nippsのアルバム客演等、幅広く活躍。近年ではSKY-HI、仙人掌の全国ツアー参加や、SKY-HI、SALU、Ja Mezz、Hungerと共演した『Name Tag』のMV、今の日本に投げかけなければいけない事を歌にした新曲『令和フリースタイル』(2019)などが話題となった。また、ライムスター宇多丸が送るTBSラジオ・アフター6ジャンクション【LIVE&DIRECT】で披露したLIVEが好評を博す。文芸誌「文藝」2019年秋季号には、4万字にわたる渾身の自伝的エッセイ「三代」が掲載された。

 

アジア主義・思想家紹介

岡倉天心(おかくら・てんしん, 1863-1913)
美術史家、思想家。本名は岡倉覚三(かくぞう)。近代日本における美術史研究の開拓者。1889年、現在の東京藝術大学美術学部の前身である東京美術学校の設立に関わり、初代校長を務めた。東京美術学校を排斥された後、知人の誘いでインドを訪れたことがきっかけとなり、『東洋の理想』(1903)が書き上げられた。『東洋の理想』は英語で執筆され、冒頭のAsia is one(アジアは一つ)という言葉は、アジア主義に強い影響を与えた。

柳宗悦(やなぎ・そうえつ, 1889-1961)
美学者、宗教哲学者。「やなぎ・むねよし」とも。無名の職人の手による日常雑器の中にこそ美を見出す、「民藝運動」の創始者として知られる。「朝鮮の友に贈る書」は1920年に発表された。その背景にあったのは、1919年に起きた朝鮮の独立運動の勃発とそれに対する日本政府による鎮圧と虐殺である。この事態に衝撃を受けた柳宗悦はすぐさま『読売新聞』に「朝鮮人を想う」を投稿し、その後「朝鮮の友に贈る書」が執筆された。

孫文(そんぶん, 1866-1925)
政治家、革命家。中国革命の象徴とも言える人物。中華民国では「国父」とも呼ばれる。中国(清)の広東に生まれる。1895年、武装蜂起の失敗から日本に亡命。宮崎滔天の紹介で、アジア主義の巨頭・頭山満と出会う。1911年の辛亥革命の後、中華民国の初代臨時大統領に任命された。「大アジア主義」(「大亜細亜問題」)と題されたこの講演は、1924年11月28日に県立神戸高等女学校で行われ、多くの市民が集まった。

 

メディア問い合わせ:portb.info@gmail.com

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