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「わたしたちの声」を集める移動型演劇プロジェクト
東日本大震災と福島の原発事故を経て、「わたしたちの声」とはなにか、どうすればそれを聞くことができるのかという問いに、演劇的な応答が示された作品。「Referendum – 国民投票プロジェクト」と書かれた改造保冷車の荷台に映像インスタレーションの鑑賞ブースが設けられ、東京と福島の中学生へのインタビューが一人一枚のDVDになって並んでいる。質問はたとえば、今一番欲しいものは何ですか、総理大臣になったら何をしますか、これから東京/福島はどうなると思いますか、今一番わからない事は何ですか、あなたの夢は何ですか…。観客は自由に鑑賞し、最後に自分自身もブースで同じ質問に答え、投票する。投票用紙はプロジェクトのウェブサイトで公開され、中学生のインタビューと観客の投票が「わたしたちの声」としてアーカイブされていく。
改造保冷車は東京都内、横浜市、福島県を巡回し、声は移動しつづけた。詩人の山田亮太と歌人の斉藤斎藤がそれに付き添い、うたの声が重ねられた。
一カ月の会期中には、トークイベントが繰り返され、鴻英良、谷川俊太郎、磯崎新、川俣正、ハンス=ティース・レーマン、赤坂憲雄、吉増剛造、原武史、吉見俊哉、黒瀬陽平、桂英史、濱野智史、和合亮一、今野勉の各氏が招かれ、政治、歴史、声、意志決定について対話を繰り返した。(これらの対話は『はじまりの対話』(思潮社)にまとめられている。)
政治への直接的な参加資格をもたない中学生の声を集め、賛成/反対に収まらない問いを投げ、うたをつくり、意志決定に至らない対話を繰り返す。それを「国民投票」と名付けることで、政治が聞き取らない「わたしたちの声」を演劇プロジェクトという枠組みで集めた。
『国民投票プロジェクト』は、続く2012年夏に東北を巡り、14年春には広島・長崎・埼玉を訪れた。中学生のインタビュー映像と観客の投票用紙のアーカイブは膨らみ、その蓄積は2011年以後の「声」を記録し続けている。インタビュー映像は水戸(水戸芸術館)、ウィーン(ウィーン芸術アカデミー)、ベルリン(ヘッベル・アム・ウーファー劇場)などで展示された。(プロジェクトは現在も継続中。)
『Referendum – 国民投票プロジェクト』特設サイト
『Referendum – 国民投票プロジェクト』フェスティバル/トーキョー11